当時僕は高校まで自転車で登校していました。
あれはちょうど今頃、つまり秋口の頃だった様な気がします。
夜七時頃、いつもの様に帰宅していると前方に何か動く物が見えました。
僕は最初ビニール袋だなと思いあの「ザシュッ」という音聴きたさに、ふんずけてやろうと思いました。
ただ近づいて観るとそれはビニール袋ではない事に気づきました。
そう、それは子猫だったのです。
僕は自転車から降りてその猫を観ました。
一目見てみなしごとわかるその子猫は誰かに助けを呼ぶように「ミャーミャー」と鳴き続けます。
その鳴き声が
「ああ、私は哀しいみなしご子猫。この大都会のどこかにわたくしめを保護して然るべきエサを与えてくださる現代の救世主(メシア)はいらっしゃらないでしょうか」
と言ってるように聞こえました。
僕は大変不憫に思い、その猫を持ち帰りました。明るい所で観てみると絵に描いた様な不細工な猫だったのを覚えています。
こんな不細工な猫、野良で生活できるわけがない。
僕は事の顛末を両親に告げました。
しかし冷徹な大人の心を持つ彼らは大反対。
「ウチにはもうすでに猫がいるであろう!」
「そんな事より洗濯は済んだのかい!」
と門前払いを受けてしまいました。
僕は泣く泣くその猫を外に出しました。
ただまだ子猫。それから何日か僕は猫のエサをそっと外に置いておきました。
そしてその猫の存在を忘れかけていたある日、前日にゲーテの若きウェルテルの悩みを読んで夜を更かしてしまった僕は、遅刻気味の中高校へ向かう為玄関を出ました。
その時です。
一匹の野良猫が、僕に近づいてきたのです。
「!!」
僕にはそれがすぐにあの不細工な子猫だという事がわかりました。
「君はあの時の!」
もうすでに立派な大人の猫に成長していた不細工な子猫は、僕の足にまとわりつくと僕をじっと見つめていました。
「大きくなったなあ・・・」
この感動の再開をはたしましたが、僕には時間が迫っていました。
※学校です
そうそうにその猫に別れをいい、学校に向かいました。
※雰囲気を出すため意味なく「墓場」にいます
あれから何年もの月日が流れ僕は大人になりました。
ただ、街の中で野良猫を見かけるといつもあの律儀な不細工な猫の事を思い出すのです。
あの猫は、僕に何が言いたかったのでしょうか。
動物の言葉はわかりませんが、あの時あの猫はたしかに
「ありがとう」
と言っていたように思います。
猫との出会いは突然で、僕はあの猫に何もしてやれなかったのですが、なんとかしようとしたその気持ちに、お礼を言われた気がしたのです。
それ以来、その猫を見る事はありませんでした。
あの猫は今どこでどうしているのか、、、
それを知るには流れた月日が多すぎます。
ただ、僕がこの何年かの中であの時と変わった事は
猫アレルギーになりました。
今また来られても触れません。
今また来られても触れません。
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